「むかしむかし…――」


“白雪姫”と書かれた表紙の文字と一緒に
可愛らしい赤い頭巾を被った女の子が描かれた絵本を湖砥にぃの膝に座り聞く


「――…老婆から毒林檎を受け取り白雪姫はその毒林檎を…「イヤ!」

「澄凪!」


ビリッ!


湖砥にぃの膝から飛び降り、絵本を破る澄凪


「だってシラユキヒメがっ…シラユキヒメ、パパみたいにオホシサマに…ふぇ」


泣きじゃくる澄凪を抱き寄せ「白雪姫が毒林檎を食べたら死んじゃうから澄凪は食べさせないようにしたのか」

湖砥にぃの優しい声

「澄凪は優しい子だな」


湖砥にぃはいつもこうやって“優しい子”と言い撫でてくれた


…アタシの所為で家にある本はほとんど、破れた状態

シンデレラも不思議の国のアリスも…
途中から無い


保育園で保育士さんが読み聞かせをする時、あたしは途中から泣きじゃくり、

保育士さんから絵本を奪い破った

その所為で湖砥にぃは呼び出され、病院に行くよう説得されていた事もあった

湖砥にぃはいつも謝り続けた…

そんな姿が嫌で、あたしは絵本を開く事が無くなった

読み聞かせの時は別の部屋に居た。


Badendが嫌い


どうして幸せなままじゃ駄目なのか分からなかった


そう、中学三年生になった今でも…―――