坊主狩り――そんな渾名をつけられる巫女なんているのだろうか。そんな疑問を抱えている方々がこの日本にどれだけ存在するか私は知らないが、その答えを求めるのだとしたら“Yes”。その一言に尽きる。――というのも、私の姉、墓森夜千代は巫女と大学生の二足の草鞋を履く百人中九十三人が認める美人にも関わらず、極度の変態だからだ。まず好みのタイプがおかしい。姉は僧衣が大好きな人だ。現在進行形で。しかも、黒髪坊主の僧侶がストライクゾーンど真ん中だというまさかである。それと“坊主狩り”という物騒な渾名がどう関係あるのかと問われれば、それは姉の美貌にあった。姉は百人中九十三人が振り向くであろうプロポーションを誇る美人なのである。豊かな胸はツン、と上を向き、腰はコルセットで締め付けてるのかと問い質したくなる程細い。そして尻はその凶悪なバストと対を成す様に大きく――私はそうは思わないが、世の中の男性諸君はその“デカ尻”が堪らないそうなのである。つまりボンキュッボンな巫女で大学生な姉は修行僧を破戒僧にする程度の力を誇る魔性なのである。おまけに姉は“法衣萌え”だ。僧衣を身に纏った色男――いや色坊主とでも読んだ方が宜しいだろうか――に口説かれたら、それはもう某男子大学生の如く、ホイホイとついていってしまうのだ。――と聞けば一見此方から手出ししなければ無害な女に見える。それが違うのだ。彼女はビッチだ。雌犬と書いてビッチと呼ぶようなビッチである。自分好みの僧衣が似合う男前な坊主を見掛けると口説きに言ってしまうのが姉の最低な所だ。それに姉は、何度も言うようでしつこくて申し訳無いが、百人中九十三人が振り向くであろう美貌の持ち主である。そんな女に迫られて断る人間なんてホモか勃起不全くらいしかいない。――というのが、昨晩姉に童貞を捧げた我がクラスメイトの言葉なのだが、正直ちゃんとしたお坊さんなら断るとかすると思う。というか思いたい。僧侶が皆エロ坊主なんて嫌だ。