「……宮口さん?」
 その彼女が僕の声に気付きこっちを向いた。
 違ったらとんだ間抜けだ。

「あ、……誰だっけ?」

 お約束だった。最早、僕のことなど忘れているのであろう……。
「中学の頃同じクラスだった……」
「カラス君でしょ? 憶えてるよ」
 ちょっと安心。彼女のちょっとした冗談だったようだ。
 それにしても、中学の頃のあだ名で呼ばれるとは……。
「何であだ名?」
 一応聞いてみる。
「中学の頃みんな言ってたから、そっちの方が印象強くて」
「あははは……」
 笑うしかない。
 あだ名の由来は、放課後餌付けして手懐けさせた烏を、友人の一人に見せたのがきっかけだったような……ま、それが瞬く間に広がり、あだ名定着完了という訳である。

 ……口コミって怖いね。