「早く行こうぜ」
「悪い!先行ってて」
それだけ言うと、
部室から離れて電話を掛けた。
―プルルル
「もしもし萌花?」
《今終わったの?》
「おう。あのさ、」
《もぉ待ちくたびれた!
早く帰ろうよ~。》
…ッ。んなこと言われたら
断りにくい。こんな時間まで
待っててくれたんだって
考えると、嬉しくて、でも…
もう駄目なんだ。
「そのことなんだけど俺さ
俊二と約束あったんだわ。
だから祥平さんと帰って」
《え…何それ…意味わかんな…》
「そのまんまの意味!
この暗さじゃ一人危ないし
祥平さんに送ってもらって」
こうするしかなかった。
俺なりの…諦め方。
本当俺って不器用だな…
人を好きになる資格なんて
最初っからないんだよな。
《雄哉意味わかんないよ!
なんで祥くんと帰らなきゃ
駄目なの?ねぇ…雄哉…》
んな声で俺の名前を呼ぶな…
泣きそうな声で…。
「うるせぇよ!俺は萌花より
俊二との約束のが大事なんだよ!
大人しく祥平さんと帰って」
《……もういい。わかった。
雄哉の馬鹿!最低!大嫌い!》
―プープー
聞こえてくるのは
虚しい機械音だけ。
俺最低だな…。
何であんなこと言った?
本当…最低って言われて
当たり前だな。
―――大嫌い…か。
嫌われて当然。
これで良かったんだよな。
これできっぱり萌花を忘れれる。
「祥平さん」
部室に戻り、祥平さんの下へ。
「上崎。どした?」
「今から1年の昇降口行って下さい」
「は?なんで…」
「萌花居ますから。」
俺がそう言うと、祥平さんの
顔付きが一気に変わった。
「お前が一緒に帰るんじゃなかったのか?」
「俺は俊二と帰るんで。
絶対行って下さいね?」
俺が念を押すと祥平さんは
少し戸惑いながら頷いた。
「…お疲れ様でした」
部室から出た瞬間、
俺はこの場に居たくなくて
急いで俊司の後を追いかけた。

