─放課後


「上崎。ちょっといいか?」

「はい!!」


練習中、俺は祥平さんに呼ばれた。
萌花と知り合ってから、
祥平さんと2人になることが
なかったから少し気まずい俺。


「…お前、萌花と仲いいのか?」


やっぱり萌花の話しか…。
練習中、無駄な話しをしない
祥平さんが、自分から野球に
関係ない話しをするなんてな。

──やっぱり祥平さんは…


「仲良いっすよ。」

「…そうか。」

「萌花のこと…まだ好きなんですか?」


一番聞きたかったこと。
祥平さんの萌花への想い。


「…好きだよ。野球を選んだこと後悔してる。」


俺も言わなくちゃ…
俺も萌花が好きだって。
祥平さんには負けないって。

でも…祥平さんを目の前に
すると、何も言えない。

俺の一番憧れで尊敬してる
祥平さんにライバル宣言するなんて…


─臆病な俺には言えない…。



「…上崎は萌花が好きなのか?」

「っ…」


真剣な目をして俺を見る祥平さん。
逸らすことなんてできなくて
心の中を見透かされそうで怖い。


「どうなんだ?」

「…っ。好きじゃないっす。」

「よかった…お前がライバルとか
勝てる気しねぇからな(笑)」


祥平さんの言葉に俺はただ
笑うしかなかった。

俺だって好きなんだよ。
誰にも負けないくらい…
祥平さんにだって譲りたくない。


「じゃ気取り直して練習戻るぞ」

「…はい。」



このとき、祥平さんに
俺も萌花が好きって伝えてたら
今、こんなことには
ならなかったんだろうか。