紅夜さんは静かな場所で話がしたいと言い、アパートに寄った

ファミレスやカフェだと、ざわざわしていてきちんと話せないと紅夜さんが言っていた

紅夜さんの部屋にあがると、床に座ってテーブルに手をついた

紅夜さんはレモンティーをグラスに淹れてテーブルに置いてくれた

「何から話せばいいのか…俺自身、わかってないんだが…
今までみたいに複数の女と、適当に過ごすのは止めた
携帯を壊してから、一度も会ってないし、メルアドも交換してない
新しい携帯も買ってないし、今ある携帯で必要最低限の友人としか連絡を取り合ってない」

紅夜さんは私のむかい側に座って、まっすぐに見つめて口を開いた

「俺は、愛実と真剣に付き合おうと思ってる
遊びじゃない
真面目に考えてる」

え?

真剣に…紅夜さんと付き合っていいの?

私、紅夜さんの恋人になっていいの?

「俺の彼女になって欲しい」

「はい…喜んで」

「良かった」

紅夜さんがふぅと息を吐いた

夢みたい

私、紅夜さんの『彼女』になったんだ

「綾についてもきちんと話をさせて欲しい
俺と付き合うなら、これからずっと綾の存在は消えないから
納得しておいて欲しいんだ」

綾さん…

紅夜さんの好きな人

「綾は、俺の姉貴の同級生だった
5歳年上で
中学2年で付き合って、高校1年のときに別れた
別れらしい、別れなんて俺らにはなくて……
良い交際が続いてると思ってた
愛し合っていると思ってた
けど、ある日突然、親父と腕を組んで綾が俺の前に立ったんだ
親父から、綾が新しい義母だと教えられた
綾は、俺の父親の妻になったんだ」

紅夜さんは唇を噛みしめた

つらそうな顔をしている

まだ…きっと綾さんへの気持ちを忘れてないんだと思う