一年ぶりに見る紅夜さんは、さらに格好良くなってた

胸が苦しい

まだこんなに好きなんて…私、馬鹿だ

報われない恋

振り向いてもらえない恋だって知ってるのに

まだ忘れてない

紅夜さんへの気持ちを処理できてないみたい

心がちくちくと痛んだ

朱音ちゃんの荷物を置いた紅夜さんは、私と目が合うことなくすぐに部屋を退出していった

時間にして30秒もなかった気がする

あっという間に部屋から姿が消えてしまった

部屋に入ったのが、まるで幻だったのではないか?

と思ってしまうほど短い時間だった

私は紅夜さんが出て行ったドアをじっと眺めた

眺めながら、姉と一緒になって笑っている紅夜さんを思い出していた

「どうしたの?」

朱音ちゃんの顔が視界に飛び込んできた

不思議そうな顔をして首を傾げている

「えっと……一目ぼれ…っていうのかな?」

私は下を向いて、小さい声で呟いた

前から知っているなんて…言えなかった

姉の彼氏だった紅夜さんに恋してたなんて…言えないよ

「え? 紅夜兄を?」

朱音ちゃんが、驚いた声をあげた

紅夜さん

朱音ちゃんのお兄ちゃんだったんだ

友達のお兄さんだったなんて……知らなかった