午後10時

紅夜さんが予約してくれていた旅館に到着した

途中、レストランで夕食を食べたのでお腹が満腹だった

部屋は15畳くらいある和室で

畳のにおいと、活けてるあるお花の匂いがした

車に中にあった女性の香水から解放された気がした

でも制服はすっかり香水のにおいがうつってしまっている

鼻腔も香水のにおいを覚えていて、旅館の部屋まで香水に侵されているように感じてしまった

部屋の隅に鞄を置いていると、紅夜さんの携帯が鳴った

「もしもし?
あ…菜々? どうした?
明日か…夜からならあいてるよ
了解!
んじゃ明日の午後7時に」

デートの約束かな?

紅夜さんが楽しそうに話をしている

私と話すときと、全然様子が違う


どうして私を旅行に誘ったりしたのだろう

私は一度、紅夜さんに振られているのに

紅夜さんだって振ったのを覚えているはず

なのにどうして?



パタンと携帯の閉じる音が響いた


私と別れたら、菜々さんって人と会うんだ

この旅行が終わったら、紅夜さんは菜々と楽しい夜を過ごすのだろう


なんか…心の奥が苦しい



「風呂、入りに行くか?」

「はい」

「残念ながら、混浴じゃないんだ
男女別々の風呂だから…風呂から出たらロビーで待ってるよ」

「わかりました」

私は鞄から、入浴セットを一式持つと、紅夜さんと部屋を出た