互いの立っている距離感も考えずに、同時に頭をさげた私たちは額と額をゴツンとぶつけた

「いたっ」
「いたたた」

鈍い音がすると、私の額に痛みが走った

私は額を押さえると、ゆっくりと擦る

紅夜さんのお父さんも、おでこを撫でていた

「す、すみません」

「あ、いえ、私こそ」

もっと厳格で、怖い人かと思ったけど…なんか可愛らしい人?

「朱音から聞いてますよ
沖野さんのこと…今、紅夜と付き合ってるとかって」

「あ、はい
すみません」

「え? 何で謝るんです?」

「いや…なんとなく」

紅夜さんのお父さんはニカッと笑うと、重たそうに手に持っている紙袋を持ち直していた

「仕事を終えて、綾の着替えとか持って来ていたら、こんな時間になってしまって…」

「え? こんなにたくさん、持ってきたんですか?
一晩だけですよ?
明日の朝にはもう…帰れるって」

「そうなんですけど、ね
何を持ってきたらいいのか、わからなくて
パジャマと下着と服と…雑誌とゲームと、化粧品と…あとは…」

「も、もういいですって」

私は指を折りながら、持ってきたモノをあげるお父さんの言葉を止めた

なんか…紅夜さんと話してるときのお父さんとは思えないんだけど

携帯から漏れてきた声はもっと厳格な父って感じのイメージがしたんだけどな