「ただいま」学校から帰って来た私にお母さんが、
「梓、これに着替えなさい。急いでね。」と渡されたのは、黒のブレザーとスカート。 服をかかえながら自分の部屋へ向かうとお兄ちゃんがいた。小さい頃にお父さんを亡くした私には歳の離れたお兄ちゃんはお父さんのような存在だ。
「お兄ちゃんまで黒い服着てどうしたの?」お兄ちゃんは気まずそうに言った。
「都ばあちゃんが死んだんだ。」
冗談の多いお兄ちゃんの事だから、嘘かと思った。でも、お兄ちゃんの顔が笑う事はなかった。
「う、嘘でしょ」
でもお兄ちゃんが首をたてには振らなかった。耐えられなくなって自分の部屋にとじこもった。おばあちゃん子だった私にはあまりにも重すぎる重りだった。