どれだけの時間が経っただろう?神楽さんは、しがみついた私をそっと抱きかかえ、頭を優しく撫でると涙を指で拭ってくれた。
「…ありがとう。しずめちゃん、わかった。どこにも行かないから…泣き止んでね。しずめちゃんが泣いてると、私も悲しい」
 そう言うと、神楽さんはツェルトが敷かれた寝袋まで私を連れていくと、私の体が冷えないように、優しく抱きかかえてくれた。
「しずめちゃん。何かお話をして上げましょうか?そうだなぁ…何が良いかな?」
 神楽さんは私を横にすると、添い寝をする形で私の頭に手を置き、ゆっくりと、優しく撫でながら、父の話をたくさんしてくれた。神楽さんの声は優しく、撫でる手は心地よい温もりを与えてくれる。私は、神楽さんが側にいてくれる事に安心して、徐々に瞼が重くなっていくのを感じた。