雲間のレゾンデートル

 逃げ場を失った隆ちゃんの背が廊下にピタリとひっつく。
 その前にはシャツのボタンを全部外したあたし。
 その距離は20センチも無い。

 普段生活するにはありえないような近さだと思う。
 そう言えばこんなに隆ちゃんの近くにいるの、小学生の時に遊んでもらってた以来じゃないかな?


 そんなちょっと懐かしい思い出が過るけどだからといって止める気も無い。


 少しでも動けば触れられる距離を保ちあたしは黙る。

 隆ちゃんはあたしよりも頭1つ以上大きい。
 ガタイもいい男の人だ。

 その気になればあたしを払い除けることなんて簡単なことだろうけどそうはしなかった。


 シンとした廊下にバシャバシャと響く雨音と隆ちゃんとあたしの押し殺した息だけが響く。


 隆ちゃんは、しゃべらない。