夫を無くして一番悲しんでいるのは彼女なのかもしれない。あたしはそんな彼女を憎めれば楽だったのかも。



でもそれは出来なかった。


あたしが夫について来てさえいれば、回避出来たことかも知れなかった。



「…また明日来ます。」



とあたしは夫のマンションを後にした。



自宅に電話をし、子供達の面倒を見に来てくれている夫の両親には明日帰りますと告げ、あたしは夫の事故現場へ向かった。




交差点にはたくさんの花束や飲み物が供えられてあり、あたしはそこにしゃがみこんだ。




「……うっ……ひっく…」



あたしは泣いた。



夫が亡くなってから、初めて泣いた。



知らなかった。



あなたも寂しかったこと。


いつも優しくて強い人だった。泣き言なんて言うことは一度も無くて、いつも笑ってた。



…そう思ってた。



無くして気づかされたなんて…



賢人…ひどいよ。



あたし達は…



何だったの…?