テレビを着けてニュースを観ても全く頭に入らない。
両手に持ったマグカップのコーヒーもどんどん冷めていく。
瞼を閉じる度に、彼の顔と囁く吐息を思い出してしまう。
ダメよ、しっかりしなくちゃ!
あたしは子供達を起こし、朝食をテーブルへと運んだ。
「…お母さん、目赤いけど…どしたの?」
長男がお味噌汁を啜りながら聞いてきた。
ギクリとする。
「お母さん泣いちゃったの?」
心配そうに次男が顔を覗き込む。
「…夕べね、深夜に映画やっててね…感動して泣いちゃったのよ。」
「……本当に?」
「そうだよ!すっごいボロボロ涙出ちゃって…そんなに赤いかな?冷やさなくちゃ会社行けないね!」
あたしはさらりと嘘をつく。

