……あたし、あのまま寝ちゃったんだ…



慌てて飛び起きると、隣には成瀬さんが規則的な寝息を立てている。



今…何時?



ベッドサイドのデジタル時計は朝の3時半を指していた。



帰らなくちゃ…



あたしは成瀬さんを起こさないようにそっとベッドから降り、シャワールームへ向かった。



熱いシャワーを浴びていると、さっきの出来事が頭を過った。


久しぶりに得た快感だった。思い出すだけで胸が熱くなる。


夫とはもう何年も夜を共にしていない。


お互いに求めることも無くなっていた。


それは…


夫の単身赴任が決まってすぐに3人目の子供を妊娠したが、夫の帰らない毎日の不安と忙しさが体に鞭を打ち続けたらしく、流産してしまったのだ。



産んであげられなかった懺悔と後悔の気持ちが、しばらくあたしを苦しめた。


さらに追い討ちを掛けるように、夫の実家からは仕事を辞めなかったからだと、夫がいない合間に乗り込まれ散々責められた。夫は赴任先から電話で庇ってはくれたが、夫の両親からの嫌味はしばらく続いた。あたしは女として、負の烙印を押されたようだった…

それ以来、セックスが怖くなり、夫の誘いにもどうしても乗る気になれなかったのだ。



なのに…



あたし、怖くなかった。



何年振りかの逢瀬を、夫ではない人としてしまったんだ…