その男性は、とても端正な顔立ちだった。年は…あたしより少し上かな?仕立ての良いスーツを身に纏い、品がある物腰であたしの隣に座った。



「どうも、成瀬(なるせ)と申します。今日はご無理を言ってしかもお待たせしてしまって…本当に申し訳ありません。」


名刺を差し出しながら深々とお辞儀をしてきた。


名刺には
<成瀬コーポレーション レストラン開発業務取締役専務 成瀬孝行>と書かれてあった。ここ数年、この不況の中でも急速に実績を伸ばしている会社の専務さんだなんて…こんな人にあたしが商品説明すんの!?一気に緊張してきた。


「いえ、そんな…私も先程来たばかりですので…顔を上げて下さい!私、風間(かざま)と申します。」


あたしも名刺を差し出し、二人で頭を下げ合っていた。


「もう、二人共米つきバッタみたいにしてないで座ったら?」


マスターは笑っていた。


「じゃあ…座りましょうか。」


成瀬さんに促され、あたし逹はカウンターに座った。


「早速ですが、こちらが当社のパンフレットになります。ほとんどは小売店価格ですが、業務用の製品はこちらの価格と、輸入した製品に関してはこちらの資料で…」


あたしはパンフレットを広げ、緊張しながらも簡単な説明をした。成瀬さんはうんうんと頷きながら聞いている。


「私は事務なので、こんな拙い説明しか出来ませんが…もっと詳しいことは宜しければ営業を向かわせますが?」


「いや、わかりやすくて充分素晴らしい説明でしたよ。そうですね、うちの営業担当に話をしておきます。明後日でもよろしいですか?是非取引をお願いしたい。」


「ありがとうございます!!明日、弊社の営業にアポを取らせますので、宜しくお願い致します!」



あたしはホッと胸を撫で下ろした。


営業でも無いのに、契約取れそうなんて…