またね

誰も翔太郎の電話のことには触れなかった…


翔太郎自身も一度も席を外さずに座っていたかのように…
何もなかったかのように隣に座って笑っていた…

そして私たちは何杯もお酒をお代わりしてはグラスを空けた。ひとみも力也も翔太郎も…
そして私も…


「じゃ そろそろ次行くかぁ―」


力也はそう言うとひとみの腕を強引に引っ張った…


ひとみはその勢いでよろけて力也の腕のなかにすっぽりと納まった…

そして力也はそれが当たり前のようにひとみに軽くキスをした。

「ぉ…おぃ…!」

翔太郎がすこし焦ったようにそう言うと力也は

 
「俺の愛の証!」


そしてもう一度ひとみにキスをした…


「待ってるだけじゃ 何も始まらないよ」


力也は真っ直ぐ私を見つめてそう言った。


待ってるだけじゃ始まらない?


何を私は待ってるの?
何も待ってなんかいない…