またね

暫く三人は無言で翔太郎が出ていった店の扉を見ていた。

もう翔太郎は戻ってこないかもしれない…

何故だか胸が締め付けられるように苦しくなった…

そして涙で景色がぼやけた…

「何か! 飲み足りねぇ!前っち!今日は飲もう!」

暗く沈んだ空気の沈黙を破って力也は少し淋しそうに笑った
そしで私の頭に手を置いて
よしよし とまるで子供をあやすように優しくなぜた。


力也は優しい…
いつも馬鹿ばかりしていて、お調子者でチラオだと思っていたけど…
力也はいつも人のことを考えてくれている…
そう思えた。

私は力也の優しさに初めて気が付いた…
力也の優しさが嬉しかった…

ありがとう…力也…


「うん…!飲む!カシオレお代わり!」

「ひとみもぉ!」

10分…
15分…

翔太郎はまだ帰ってこなかった…
1分が何時間にも感じた…
私はそんなにお酒に強くもないのに…
少しでも気持ちが紛れればと何杯もお代わりを頼んではグラスを次々と空けた…


4杯目を飲み干た時、翔太郎は戻って来た。


かじかんだ手をさすりながら…

「悪い!半端なく外寒い!」

そう言うと冷たくなった両手を私の頬を挟むように付けた。


「冷たぁい!」


翔太郎に挟まれた冷たいはずの頬がみるみる赤くなって火照った…


翔太郎はいつものクールな顔を装って


「ごめん 待った?!」


申し訳なさそうに目を伏せた…