寮までの距離がとても短く感じられた…


翔太郎は私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれたけど…


「じぁ おやすみ! 明日は遅刻はなかとよ!!」


「うん…」


もう少し一緒にいたいよ…

「寒かぁ― 風邪ひくなよ!早く入らんと!!またな!明日 おやすみ」


「う…うん おやすみ!」

翔太郎は私の気持ちに気付くはずもなく男子寮の方へ歩きだした。


「またな!明日…」


にやけた顔の自分が鏡に映っていた… 


鼻歌まじりで階段をあがると丁度洗面所からひとみが出てきた。


「結お帰りぃ―大成功!!」


私はひとみの言っていることが暫く分からなくて、ぽかーんとひとみの顔を見た…

「力君!」 


「あ…ぁよかったやん!!」


ひとみは照れながらもとても嬉しそうに顔を赤らめて微笑んだ…



「彼氏が2人かぁ…」



「ん?」


「あっ何でもない!」


その時は私もひとみもこれから起こる出来事なんて一つも考えていなかった。
深く考えもしないで、今だけを考えていた…



2人の恋心は小さな火を灯しはじめた…