准教授 高野先生の結婚


私は一人娘で一人っ子。

だから、私の両親にとって我が子の結婚というイベント?は最初で最後の一度きり。

もちろん、それは私が寛行さんと生涯添い遂げられればの話だけれど……。

まあ、結婚生活が円満で離婚も再婚もなければ基本的には1回だ。

それに比べて、三人息子がいる寛行さんのご両親は、これが最後とはいえもう3度目。

ベテランという言い方もあれだけど、勝手知ったる経験者には違いない。

「しーちゃんのご両親がきちんとした結納をされたいようなら遠慮なく言ってね」

「あっ、はい!ありがとうございます」

右も左もわからぬ私にとって、お母さんの心遣いは心強くありがたい。

さらにさらに、私には頼もしい先輩だっているのだから心安いというものだ。

“結納”という言葉に、むっちゃんとジュンちゃんが懐かしそうに目を細める。

「なっつかすぃ~。マサくんも私もすっごい緊張したの覚えてるよ~」

「“幾久しく……”ってやつでしょ?そっかあ、むっちゃんはあれをやったのね」

「あれ?ジュンちゃんとトモさんはしてなかったんだ?」

「うん。うちは顔合わせの食事会しただけ。一応その前に指輪くれたりしたけどね」

指輪……。

婚約指輪も結納もナシというのはダメなのだろうか???

私としては簡素にあっさり、さらりといきたいとこなのだけど……。

うーむ……。

なんてことを心うちで思う私に、光ちゃんが目を輝かせながら尋ねてきた。

「しーちゃんのコンヤクユビワはぁ?」

「え゛っ」

瞬間――

興味、期待、懸念……皆の視線と思惑が一気に私に向けられた。