准教授 高野先生の結婚


ちょうど皆がそろっていたので、寛行さんと私は少し今後の相談をさせてもらった。

両家の顔合わせのこと、入籍の時期のこと、結婚式のこと……。

「僕らとしては、結婚式は親兄弟だけで小ぢんまりとやりたいと思ってるんだ――」

二人で話し合った考えを寛行さんが皆の前でざっくり話す。

結婚式はごくごく地味に家族だけでやりたいこと。

時期的には5月頃を考えていて、Y市でやりたいので皆にご足労願いたいこと。

その前に、私の大学院修了と就職を考え、籍は3月中に入れたいこと。

さらにその前に、引越しの繁忙期を避けて2月には同居を始めたいこと。

さらにさらにその前に、できれば1月中には両家の顔合わせをすませたいこと。

などなど、もろもろいろんなこと……。

そして――

「まあ、とりあえず二人の考えはこんな感じなんだけど――」

ざざっと全部を掻い摘んで話した後に、彼は大事な部分をつけたした。

「詩織ちゃんのご両親の考えや皆の話も聞いてから色々また考えたいと思ってる」

もちろん、大事なのは当人同士の気持ち。

だけど――

大切なのは二人の気持ちだけじゃあない。


お父さんもお母さんも寛行さんが話すのを黙ってじっくり聞いてくれた。

そして、お義父さんは穏やかな口調で私たちにこう言った。

「二人のしたいようにしなさい。うちのほうは問題ないから。なあ、母さん?」

「ええ、ええ。二人の気持ちが一番ですもの。ただね……」

「くれぐれも、しーちゃんのご両親のご意向はきちんと伺うようにしないとな」

「そうよ、寛行。大事な一人娘さんなんだからね。思いもひとしおでしょうから」

お父さんとお母さんのありがたい言葉を受けて寛行さんは――

「わかってる。ちゃんとご相談させていただくつもりだから、大丈夫だよ」

私の両親にきちんと配慮することをしっかり約束してくれた。

きっと、子どもの結婚って親にとっても一大事。

だって、私も彼も自分一人で大きくなったわけじゃあない。

だからこそ――

親心だって、ちゃんとちゃんと大切に。

育ててくれた人の気持ちも置き去りにせず大事にしなきゃ。