准教授 高野先生の結婚


私をお供に元気よくパタパタパタと廊下を走る望クン。

「たーちゃーん!じーじぃ!おかえりー」

たーちゃん???

手をひかれた私は、少しつんのめるような格好で玄関のお三方の前におどり出た。

「お、おじゃましております!あの……は、はじめまして、鈴木詩織と申します!」

目の前には――

真ん中に、ケンタッキーの箱を大事そうに抱っこしてる光ちゃん。

その左に、お寿司を持った寛行さんのお父さん。

そして、光ちゃんの右側にはピザの箱を抱えている――

「あらまあ!どーも、寛行の母です」

“たーちゃん”って寛行さんのお母さん?

「お待たせしちゃってごめんなさいね」

「い、いえ!そんな、ぜんぜんです」

「こっちは主人と孫の……じゃなくて、ええと、寛行の姪の光です」

“じーじ”と呼ばれた寛行さんのお父さんと、望クンのお姉さんの光ちゃん。

お父さんの穏やかな笑顔は、寛行さんとそっくりで――

「寛行の父です。いや、今日はわざわざこんな田舎まで来ていただいて……」

「そんな!こちらこそ、お休みの日にお邪魔させていただいて……」

光ちゃんは、屈託の無い可愛いおしゃまな女の子で――

「こんにちわ、高野光デス。えっと、ヒロユキがいつもお世話になってます♪」

「こんにちは。あの、私のほうこそ寛行さんにお世話になりっぱなしというか……」

そして――

「さあさあ!早く皆でお昼にしましょ!お腹空いたでしょ?“しーちゃん”も」

「えっ」

今、確かに“しーちゃん”って……!?

思いがけず寛行さんのお母さんにそう呼ばれて、きょとんとぱちくり。

「だって、詩織ちゃんでしょ?だから、“しーちゃん”って……ダメかしら???」

「ぜ、ぜんぜんダメじゃないですっ!」

「じゃあ決まりね」

お母さんが嬉しそうにニコッと笑って、ピザの箱を私のほうへ差し出したので――

「はい!よ、よろしくお願いします!」

私はそれをまるで表彰状でも受け取るみたいに謹んでありがたーく拝受した。

アツアツのピザが入ったその箱も、私の心も、温かくってホカホカだった。