彼も私も犬派か猫派かと問われれば、たぶん猫派だと思う。
特に彼は短毛種の黒猫にとても心惹かれるようで、黒猫グッズを見つけてはついつい買ってしまうほど。
でも、自分たちの性格はというと――おそらく犬だ。
自由で気ままな猫に憧れる、生真面目でちょっと苦労性な犬。
おそらく従順であろう私と、確かに忠実な彼。
「寛行さんは――」
「なんだろう?」
「“愛すること”にとても忠実な人だと思います」
特別な夜だから特別に、特別なことを言ってみた。
幸か不幸か、私は高野寛行という男性(ひと)としか恋愛をしたことがない。
そして、“彼という男性しか知らない”。
それでも思うのだ。
彼ほど純粋で誠実な人はいないのではないか、と。
何かや誰かを想うことに、こんなにも真っ直ぐでひたむきになれる人っていないんじゃないかな、って。
彼は一瞬だけ「えっ」と驚いた表情(かお)をして、それからすぐに「まいったな」と困ったように微笑んだ。
はにかんだときに見せる、私の好きな彼の表情。
「いやはや……。僕はなんと答えてよいのやら、この状況で」
「あら、なんともでもお答えになればよろしいのに」
この状況――。
私の髪が彼に何度も何度も撫でられたせいで、くしゃくしゃになっていても。
私だけパジャマを脱がされて、体のそこここに唇を押し当てられていたとしても。
「なんか、私……」
「うん?」
「完全に寛行さんのものになっちゃいましたね」
結婚式の威力(?)ってやっぱりすごい。
こんな言い方へんだけど、とどめを刺されたような、年貢の納めどきの年貢を納めちゃったような。
もちろん、既に入籍をした時点で正式な妻だったわけだけど。
それでもやっぱり、結婚式を挙げたことでようやく彼と私の婚姻が“完成した”ような、そんな実感があった。
「むぅぅ、恐るべしイニシエーション。私、人様の前でキスなんて今日ので最初で最後だもん」
「僕だってごめんだよ。人様の前でプロポーズするのもね」
「ね」
「ね」



