准教授 高野先生の結婚


その夜、新郎新婦は夢のようなゴージャスなスイートルームでもなく、ハネムーンへ向かう飛行機の中でもなく、いつもと同じ生活感たっぷりの二人の我が家にいた。


「あああー、ぢーがーれーだーよおー」

「はいはい。お疲れ様だったね、花嫁さん」


花婿さんに労いの言葉をかけられつつ、ベッドにダイブ。


「うぉー。シーツと同化するぅー、一体化するぅー」


突っ伏すようにして、べったりぐんにゃり寛ぎモード。

お風呂に入ってさっぱりしたし、歯みがきだってしたし、後はもう……。

と、気持ちだけは頭の中にしっかりありつつ裏腹な台詞を言ってみる。


「“なんだか、とっても眠いんだ……”」

「この子はまた、可愛そうなアニメの最終回みたいな台詞を」


隣に寝そべる彼が苦笑しながら私の背中をさらさら撫でる。


「あー、気持ちいい。そして……眠い」

「あらら……というか、まさか君ほんとに寝ちゃうの?」

「……ワン」


正直、かなりお疲れではある。

このまま撫でてもらっていたら、子どもみたいにうっかり寝かしつけられちゃうかも。

でも、今夜は一応(?)特別な夜だし。


「寛行さんがどうしても起きていて欲しいというなら、頑張ってあげなくもないですよ。ワンワン」

「どうしてもだよ、バウワウ」


などと言いながら、うつ伏せの私にのっしと覆いかぶさる寛行さん。


「なんか大型犬っぽいかも。ん?じゃなくて、外国の犬?」

「君こそ、眠くなるのは犬じゃなくて少年でしょ」

「むぅぅ、大型犬のくせにぃぃ。小っさいこと、言わない、の――っと」


彼の腕に窮屈に閉じ込められながら、もぞもぞ体を動かしてよいしょと体を反転させる。


「ワン」

「バウワウ」


眠たい犬をじっと見下ろす大型犬(何故かアメリカナイズされた吠え方の)。

体こそ大きいけれど、繊細でちょっと気弱な優しい彼。

見つめられた眠たい犬は目を閉じる。

眠るためでなく、身も心もあなたに預けましたと伝えるために。

まるで絶対服従を示して観念したみたいに。

ただ、彼のお得意の台詞“負けるが勝ち”が本当なら、服従している私の勝ちとも?