集い、誓い、歌い――。
見守られて、祝福されて――式は滞りなく無事終了した。
といっても、正直いっぱいいっぱいで周りなんてちっとも見る余裕がなかったし、自分の状況もたぶんよくわかってないくらいで……。
正気(?)に戻ったのは、フラワーシャワーを浴びつつ退場して集合写真を撮り終えた後、ようやくだった。
「しーちゃーん」
「シオリどのー」
真っ先に駆け寄ってくれたのは、二人してフランソワを抱きかかえた光ちゃんと望くん。
「二人ともありがとね。お世話してくれてたの?」
光ちゃんは得意げに満面の笑みを浮かべた。
「うん。教会の中でもね、望とメグちゃんとタランチュラと一緒に座ってたんだよ」
そのキョーレツな言葉に思わず耳を疑う私。
「タランチュラ!?」
「タランチュラ、可愛いけど大きくてけっこう重たいね。ヒロユキからのプレゼントなんでしょお?」
寛行さんからのプレゼントってのは間違いないけど。
しかしまあ、クマのタランチュラって、またなんつうウソ情報を……。
ウソを教えた犯人はもちろん言うまでもない。
「あっ、メグちゃんだ!メグちゃーん、こっちだよー」
真犯人“メグちゃん”のご登場である。
「カースーガーイー」
「どらどら、重たいだろうからこいつはあたしが預かるとすっかね」
カスガイは何食わぬ顔をして、光ちゃんと望くんの腕の中からフランソワをひょいと軽く抱きあげた。
「タランチュラじゃないですけど」
「んあ?そうだっけか?」
「フランソワだよ!フランソワ!ついでにモランボンでもないし!」
「あー、そんなバタ臭い名前だったけか?失敬失敬」
「もうっ、毒グモなんてひどいじゃん。光ちゃん、望くん、このクマの名前はタランチュラじゃなくてフランソワね。メグちゃんの勘違いだから、ね?」
それにしても、さすがカスガイ。
すっかり光ちゃんと望くんと打ち解けてお友達だもんね。
寛行さんはしばらく黙ってニコニコと皆の様子を眺めていたけれど、徐にカスガイに向かって言った。
「今日は、というか……この度は式の準備からいろいろとお世話になりまして、本当にありがとうございます。姪や甥の面倒までみていただいたようで、すみません」
折り目正しく感謝を述べる彼に、カスガイはまったく恐縮する様子もなくにしゃりと笑った。
「いえいえです。スズキ……えーと、詩織さんは豆腐をまな板の上で切るような女ですが、どうぞよろしくお願いしますデスマス」
「もうっ、カスガイってば!なんなのそれ!」
「んあ?事実?」
「そうじゃなくて!……って、まあ確かに事実だけど」
うぅ、悔しいけど言い返せないし……。
「大丈夫です。たとえ豆腐を手のひらでの上で切れなくても、油揚げの油抜きをよく忘れるようでも、僕の大事な奥さんなので」
「んだば安心だ」
「カースーガーイー。っていうか、寛行さんもっっ」
気がつけば雲は晴れていて、空は見事な五月晴れ。
新緑は鮮やかに輝き、風が心地よくそよいでいる。
贅沢に散らされた花びらを、光ちゃんがうっとり眺めてにっこり笑った。
「花びらだらけだぁ。もったいないけど、すっごくきれいだね」
皆がまいてくれたフラワーシャワーの花びらたちがふわりと舞って優しく香る。
桜でもなく、なごり雪でもなく、祝福の花びらが舞う学び舎で、私は本当の本当に“鈴木詩織”を卒業した。



