准教授 高野先生の結婚


夕方をすぎて、彼が帰宅するやいなや――。

玄関に猛スピードで駆けつけた私は、彼の胸に飛び込んで(飛びついて?)、背中にまわした手でもって彼をガシッと抱きしめた。


「おっ、熱烈歓待。って……どうしたの?」


おやおやとほんの少し驚きながらも、ほんのりと嬉しそうな彼の声。


「大丈夫なのデス」

「え?」

「寛行さんは私のことをちゃんと愛せていますよ。とっても上手に、ちゃんと」


彼の胸に頬を埋めて目を閉じる。

「私は……」

「うん?」

いつものように無遠慮にくんくんすりすりしてから、私は彼に問いかけた。

「私はその……上手に愛せていますか?寛行さんのことを、ちゃんと、上手に……」

遠慮がちに、だけど真剣に。


こういう質問を相手の目を見ないでするなんて失礼かも。

っていうか、私ってば卑怯くさい……。

けどやっぱり、どんな顔していいかわからないし。

わかったとして?思いどおりの顔なんて作れるわけないし。

だから、これが私の精いっぱい。


そして、彼の答えはというと――。


「僕、もっと自信を持つよ」

「え?」

「僕は愛せている。それに、愛されている。だから、君も……ね?」


寛行さん……。


「自信、持っていて。持っていて欲しいんだ」

「うん……はい……」

「大丈夫なんだよ」

「うん」

「大丈夫なんだよ、僕たちは」

「うん」


大丈夫。

そう、私たちは大丈夫。


私が安堵すると、彼は優しく抱きしめ直してくれた。


「ところでさ」

「ん?」

「君はまたどうしてこんな質問を?」

「えっ……」


どかーん、ばうーん……。

わーお……背景ぜんぜん察してもらえてなかったとか?

意外と寛行さん、すべてまるっとお見通しってわけじゃあないのね……。

なんか私……ひとりで恥ずかしいんですけど?