「そういえばさ、今日は君の部屋に居なかったものね。モモちゃん」
「えっ」
彼の言葉にはっとする。
寛行さんは私の隣りに腰を下ろすと、モモちゃんを手に取りしげしげと眺めた。
「夏休みに僕が君の部屋にあがりこんだときは本棚にいたのになぁ、って。
ほら、僕らが“イケナイコト”するのをじとーっと見ていたじゃない?」
「そう、言われてみると……」
私ったら、私としたことが……。
お父さんのことばっかり考えていて、部屋からモモちゃんが居なくなっていたのにちっとも気づかなくて。
久しぶりに再会したモモちゃんは、綻びが完璧に直されていて、心なしかちょっとキレイになって軽くなったようだった。
そして、首のところにお洒落なブルーのリボンをまいていた。
「なかなかいいリボンをしているね」
「うん。お母さんね、お裁縫とか好きで得意で。こういうのいっぱい持ってるの」
子どもの頃、お洋服とかバッグとか、いろーんなものを作ってくれたお母さん。
私の髪を可愛く結ってリボンを結んでくれたお母さん。
「私ね、いつも女の子の友達に羨ましがられてたの。可愛いのいっぱい持ってていいなぁって」
「うん」
それにしても、まさかモモちゃんがこのうちへやってくるとは……。
「手紙はお母さんから?」
「えっ」
そう、お裁縫箱とモモちゃんの他にもう一つ……入っていたのはクリーム色をした封筒だった。
裏面に名前はなかったけれど、表の“しーちゃんへ”という字は間違いなく見慣れたお母さんの字だった。
「お母さんから、だと思う」
私は糊付けされないままの封筒から中の便せんを取り出して、そっと開いた。



