カスガイが“こ汚い店”と称したKH貿易。
“こ汚い”という言い方はあんまりだけど、風変りなのは確かかも……。
ところで、“KH”ってなんだろう?
社長さんのイニシャルとか?
“木村 一”とか、“林 和夫”とか。
ま、どーでもいいことなんだけど……。
お世辞にも広いとは言えない手狭な店内は、ゆったりとした優雅さなど微塵もなくて。
1階は主に真珠を扱っていて、2階がブライダルリングのコーナーなのだけど――
エレベータなどはもちろん無く、しかも階段がこれまた急で……。
まさに、おウチのリフォーム番組に登場する“問題のある階段”みたいな。
さらにさらに、インテリアがまたなんとも強烈で……。
「寛行さん、招き猫いるよ」
「いるね。しかも黒と白と仲良く二匹」
「しかも、でっかいし」
「しかも、目立つし」
店員さんが“お茶をお持ちします”と席を外したので、じっくり店内を観察する二人。
「詩織ちゃん、奥にタヌキがいるよ」
「あ、ホントだ。あれって……信楽焼?」
「そう、信楽(しがらき)だね」
「あれ?“たくみ屋商店”って、寛行さんが寄りたい乾物屋さん?」
「ん?」
「ほら、そこの大きいカレンダー。下のほうにお店の名前が書いてある」
「あ、そうそう。それにしても……なんだね、君の期待通りの店なんじゃない?」
「うんん。期待以上だもん!こ汚……じゃなくて、ええと……おもしろいお店!」



