コータローの妻であり、専門学校の学生であり、働き者のアルバイターであり――
そんな超多忙なカスガイにわざわざ時間を割いてもらったのは他でもない。
「んだばコレ、忘れないうちに渡しとく」
「ありがとう!」
カスガイが持ってきてくれたのは、とある貴金属店のご紹介カードとリーフレット。
カードの御紹介者氏名の欄には“竹井 愛”の名前がしっかり記入されている。
“竹井夫妻が指輪を購入したお店を紹介してもらうこと”
そう!これこそが本日の私の重要な任務なのである。
「悪いね、忙しいのにわざわざ。ホントにありがとね」
「うんにゃ、気にしないでいいから。あと、無理にその店で決めることもないし」
「ん、わかってる」
「まあねぇ、こ洒落たジュエリーハウスと違ってこ汚い店だけど、モノは確かだよ」
「カスガイ、何もそんな言い方……」
「とにかくダ、結婚指輪は一生モノだから。うんと迷って決めたらいいと思う」
「うんうん」
結婚指輪をどこで作ろうか思案中の私。
分厚い結婚準備の情報誌なんかも見たけれど、見れば見るほどわからなくなって。
そんなとき、カスガイが言ってくれたのだ。
“んだば、とりあえずアタシが指輪買った店でものぞいてみるかえ?”と。



