やっぱり寛行さんは立派な大人の男性なのだ。

きちんと筋を通すことや相手をたてることをわかっている大人の男、みたいな?

「僕の家の都合ばかりで、本当に勝手ばかり言って恐縮なのですが……。

どうしても1月中か2月の上旬までにはきちんとご挨拶させていただきたい、と。

籍を入れるのは3月としても2月には僕と詩織さんは一緒に暮らし始めるわけですし。

ですから――

どうしてもその前に一度、詩織さんのご両親にお目にかかってご挨拶したい、と。

いかがでしょう?もちろん色々とご都合もおありかと思います。

ですが――

できれば1月中になんとかお時間を作っていただくことはできますでしょうか?」

そっか……私の世代とお父さんたちの世代ではやっぱり感覚が違うのだ。

私世代の感覚では結婚前の同棲は普通にアリだし?

妊娠をきっかけに結婚する授かり婚だってぜんぜん珍しくなんてないけれど。

でも――

親世代の感覚では同居(同棲?)することは事実婚に等しいのかも。

だから、結婚と同等の覚悟やけじめが必要である!みたいな。

それで、寛行さんのご両親は寛行さんと私が同居を始める前に挨拶を、と……。

娘を嫁に出す私の両親の(特に父親の)気持ちを大事に考えてくれているのだ。

その心遣いが嬉しくて有難くて、私は寛行さんのご両親に心の中で感謝した。

そして、控えめな態度で私の両親に接する思慮深い彼をうっとりと見つめた。