「俺……、彼女なんて、いないけど?」
そう言って、ギュウって私と由樹兄ちゃんの間に空気さえもはいんないくらい強く抱きしめられる。
「だって…
あの色違いのカップや食器は香奈のだよ?
……、香奈は今日からここで一緒に暮らすし?」
「へ??」
由樹兄ちゃんの言葉に、思考がついていかない私。
素っとん狂な声をあげて、抱きしめられたまま由樹兄ちゃんの顔を見上げれば、ニッコリと笑う由樹兄ちゃんがいて。
「俺、今日会社休んで、香奈んちの親に挨拶いってきたし?」
「はっ?」
「スーツ着て『香奈さんを僕にください』って。男のけじめ?」
「え?え?」
「快く承諾してもらって、婚姻届もサインしてもらったし?」
「え、あの?えっと、どういう?」
「あとは、俺たちが婚姻届にサインして出せばいいだけだし?」
「えっ?!それって…
えっと、あの…」
「あ、香奈の着替えもお母さんに用意してもらってあるし?」
そう言って、黒い大きなバッグを指さす、由樹にいちゃん……
「ちょ、ちょっと待ってよ!!一体何がどうなってるの!!」

