「……、だって、彼女は…?」
「はい?」
「……、ハンカチ、アイロンかかってるし、家広いし、掃除してあるし、……色ちのカップは……?」
どうしても、拭い去ることのできない疑問を由樹兄ちゃんの胸の中で呟けば。
いつも半疑問形口調の由樹兄ちゃん。
私にとってはこれ以上ないくらい心地よい、昔から慣れ親しんだ彼のリズム。
だけど、今の「はい?」は完全なる疑問形で。
この家の全てが指し示す女の人の存在をぽろぽろ口から零す私。
そんな私に由樹兄ちゃんはちょっとだけ考えて。
「ああ」って、閃いたように呟くと、クスクスと笑う。

