由樹兄ちゃんの後を追って、キッチンスペースにはいれば。
見たくもない現実が、私を襲ってくる。
「かなー、お皿出して?」って由樹兄ちゃんがニコって笑顔で言うから。
食器棚を眺めたら、色違いのカップやお揃いの食器がキレイに並べられていて。
私は再びハンカチを握りしめる。
私のせいでシワシワになっちゃたけど。
キレイにアイロンがかかった、ハンカチ。
一人で住むには、あまりに広すぎる。
掃除の行き届いた、部屋。
そこまでは、“由樹兄ちゃん綺麗好きだし!几帳面だし!”的な理由でなんとか必死に誤魔化したけど。
極めつけの、色ちのカップとお揃いの食器。
こんなダメ押しアイテムまで揃っちゃったら。
もう誤魔化しきれなくて。
嫌でも、脳裏に浮かんでくるのは。
その全てが指し示す、女の人の存在…
そうだよね…彼女いるんだね…?
って、いない方がおかしいもん、ね…?
優しいし、カッコいいし、背高いし…

