龍人大戦

「君は人間とエルフの混血…ハーフエルフを知っているかな?」

少年は答えない。
彼女も、最初から答えなど期待してないと言わんばかりに構わず続ける。

「美しく、それでいて強く、汚れのないエルフ。そんな彼らがそもそも人間と愛し合うなんて奇跡のようにまれなんだが…そこはそれ。先ほど言った通り、エルフにはなくて人間にはある力。そこに惹かれるのだろう。私はそう考える」

彼女は続ける。

「さて、エルフの美しさ、強さ、それでいて人間の力が加わったハーフエルフ。これはもう、生物として完璧だ。そう思わないかい?」

少年は答えない。

「しかし…にもかかわらず、ハーフエルフの絶対数は圧倒的に少ない。おそらくこの世でもっとも個体数が少ない種族の一つなんじゃないかな?」

彼女は続ける。

「その理由として、彼らが個体としては最高系であっても、群体としては最低系だから。自身が完璧であるがゆえ、他者に魅力を感じない。他者に可能性を見出だせない。ひいては子孫も紡げない。ウフフ…『完璧であるがゆえ、繁栄はできない』我ながら面白い矛盾論理だ」

彼女は続ける。

「以上を踏まえて、君はどうなのだろう?」

少年は…あくまでも答えない。