龍人大戦

「君は、本来有り得ない存在かもしれないな」

彼女は言った。
かつて、龍人族の脅威から世界を救った英雄が一人、
『アイスガール・アンティロア』
彼女は言った。

「この世に人型種族は数あれど、君はそのどれにも属さない。そのことについて疑問に思ったことはないのかな?」

彼女と対峙する少年が一人。
彼女がなにを言わんとしているのかわからないのだろう。
ただ、次の言葉を待つ。

「龍人族…獣人族…エルフ族…鳥人族…他にも多々存在するが、それらの共通点として『人間よりも基本能力が高い』ことがあげられる」

彼女は続ける。
少年は答えない。

「運動神経は勿論、天性の才能として魔法や空をはばたく力を持つそれら。もっとも、個体差はあるがね。…しかし、生物として一番繁栄しているのは人間だ。はて?生物として人間より遥かに優秀なそれらが、なぜ後塵をはいしているのだろうか」

彼女は続ける。

「答えは簡単『それらが優秀過ぎたから』…おかしいと思うかい?しかし、それがまごうことなき真実さ」

彼女は続ける。

「何故なら、それらは生きるために考える必要なんてなかったから。例えばエルフ族は、人間より遥かに燃費がいいし、彼らの住む森は、魔法の力により一年中温暖で天災もない。…対する人間。人間は今をもってまだ不完全極まりない。暑さに弱い、寒さに弱い、天災に弱い、脆弱、生きるために必要以上の命を奪い、森を汚し川を汚す」

彼女は続ける。

「しかし、そんな彼らだからこそ、生きるために考える。考える。考える。貪欲なまでの向上心。探求心。最初から優秀な『それら』が持つことが出来なかった唯一無二の力」

彼女は続ける。

「だからこそ、群体として頂点を極められた。…ここまでが前提。ここからが仮説」

彼女は続ける。