「奈緒が物欲しそぉ~に、僕を見つめていたからそれに答えただけだよ?!」
寝ぼけ眼を擦り、ゆっくり上半身を起こして笑いながら男は答えた。
「ちょっと!失礼ねっ!私がいつ物欲しそうな顔してたって……!」
怒鳴り出した私の声は強引に重ねてきた男の唇によって怒り共々塞がれた。
そして再び、男の重みでベットに沈み、私は至福の時に包まれた。

『イツマデモ、コンナカンケイツヅカセナイ。ハヤクコノヒトト、ワカレテ!』

だけど、男の左手に光る指輪の囁きによって、私はいつも、現実を思い知らされる。

(そんな事わかってる!わかってるけど……せめて私と会う事くらい指輪外してよっ!)

今にも口から零れそうな願い事と、溢れ出しそうな涙を塞き止める為に、今日も私は男の首筋に両手を絡め、瞼を肩に押し当てた。