「久しぶりだね!翠ちゃん」
配達が終わり、外に出ているプランターを中にしまう。いわゆる、閉店作業ってやつだ。

「時間ができたんでな、たまにはお前らの顔が見たいと思って来たんだが……だいぶ、花屋も板についたみたいで安心したよ」

翠ちゃんと呼ばれている中年のおじ様。『ちゃん』付けするには些か抵抗はある。普通の人の場合だけど……ね。

何故なら──、

警視庁、捜査一課の警部、翠川 大悟(みどりかわだいご)とは紛れも無く、目の前に居るこのお方のことだからだ。

『ちゃん』付けして呼ぶのは言わば親しみからとも言えよう。それが許されるのも『パープルA』の特権……なのかもしれない。

「まぁまぁ……ってとこじゃないですかね~」

「ところで藍の姿が見えないがどうしたんだ?」

「神崎グループにお呼ばれだそうです」

「……あいつ、何かやったのか?」

「いえ、ちょっと人助けを」


R、RuRuRu……。


「おっと、失礼」
胸の内ポケットから携帯を取り出す。

「……大変だねぇ、警部さんも」
廉は彼の電話のやりとりの様子を見つめている。

「何~っ!……ああ、分かった、すぐに伝える」


ピッ。


「また事件?」

「大変なことになったぞ。今、犯人から脅迫状が届いたそうだ」

「脅迫状……?」

「ああ、爆弾が仕掛けられた。場所は──神崎グループ本社ビル、四十五階だ」

「何だって!?」