さてと。
深呼吸を一つすると気分を取り直す。
せっかくの海を目の前にこのまま眺めているだけじゃもったいない。
ということで私も……、

「うわぁ~ん、わ~ん……」

ちょうど海に向かって走ろうしていた時だった。

迷子?

幼稚園生くらいだろうか?一人の小さな男の子が泣きながら歩いている。
う~ん。
このまま放っておくわけにもいかないしなぁ。
そんなことしたら、『パープルA』の名が廃るってもんよ。

「ねぇ、君、迷子なの?」

「うぐっひっく……う、うん……ひっく」

私の問いかけにどうやら返事をするだけが精一杯のようだ。

「そうだ、歳はいくつ?あと名前も教えてくれると助かるんだけどな」

「うっぐ……ごさいっ……かん……ざき……あおい」

よし、まずは第一関門突破!

「あおい君はどこでお父さん、お母さんとはぐれたの?」

「うっうんとね、あっち」

あっちって……。
彼の差し示した方向にはトイレがあった。
今でも四、五人が並んで列を待っているのが見える。

「もう一度行ってみようか」
ご両親も同じように捜しているハズだし。
運がよければ会える確率も……。

「あのね、お姉ちゃん。ぼく、パパとママと一緒に来たんじゃないよ」

えっ?
どういうこと?まさかこの歳で一人で来たってことは……。

「じゃあ、誰と来たの?」

「じいや」