そう。
周りを見渡しても彼女の姿はなかった。
あたしが下を降りるまで二分もかからない。
いくらなんでもそんな短時間であの体で動けるものだろうか。
茂みには花柄のシュシュが引っかかっている。
あたしは動揺するしかなかった。
「だったらあの女はどこに行ったっていうの?家にも帰ってないみたいだし捜索願いも出されてるんだよ」
「あたしは神隠しでもあったって思うようにしてる」
あは、とカナが笑う。
口元が引きつっている。
「神隠しなんてそんなことあるわけないじゃん」
「いいの。これで」
「だって」
「カナだってあの女がいないほうがせいせいするでしょ。あたしも同じ。あの女は必要ないの。だって光輝はあの女じゃなくてあたしのものだから」
「…本当にそれでいいの?」
「いいの、これで。あたしもカナもあの女のことなんか知らなかった。それでいいの」


