「何言ってるのよ、私はちゃんとこの目で見たんだから。あんたが屋上からあの女を突き飛ばすところを」
「そうよ。確かに突き飛ばしたのは事実。でもあの女は生きてたの」
「どういうこと?」
あたしは吐息をついた。
苛立ちが募る。
「最初はどうしようと思った。
なんてことしてしまったんだろうって後悔して。
恐る恐る下を見たらあの女が横たわってた。
死んでると思った。
でもね、動いたの。
あの女の手が少しだけ動いたのよ。
下にあった茂みに救われて助かったのね。
ほっとした。
あんな女でも生きててよかったって心からそう思った。
それですぐに下に降りたの。
病院に連れて行こうと思って。
警察にも本当のこと言うつもりだった。
でもね、いなかったの。
いるはずのその場所に、あの女の姿がなかったの」


