sakura -サクラ-




「良かった」



そう言うと彼は、路上に散らばってしまった私の鞄の中身を拾い始めた。



「あっ、いいです!自分でやりますから」



どうして今日に限ってスクールバッグのファスナーが開いてるの…。

私は恥ずかしくなって、慌ててその人に駆け寄った。

けれど。



「ん、これで全部だから」



彼が差し出した鞄を受け取ることしか出来なかった。



「ありがとう、ございます…」

「いえいえ。じゃあ俺急ぐんで!」



すちゃ、と顔の横に右手を掲げて、その男の人は起こした自転車で走り去った。



嵐のような、人だった……。