ジェネシス(創世記)

エフが「主」に誓った言葉を、マネに対して実行せざるをえなくなったのだ。無謀なまでに愚かな誓いを立てたために、我が子の命を自らの手で断たなくてはならない。エフはその場で、泣き崩れてしまった。

 エフは、マネに全てを話した。マネは黙ってうなずき、そして微笑んだ。現状を理解したようだ。

父の勝利が、自分の命と引き換えで得たのであれば、自ら「主」に対して生け贄としてささげられることを、快く承諾するのであった。

 戦場で死に行く者は、何も男性だけではない。女性も民たちのため、町のため、愛する家族のため、「主」のためであれば戦う兵士にもなる。

またマネには、生きる希望を失う理由が他にもあった。愛した男性が、今回の合戦で戦死していたのだ。マネはそれでも、決して泣かなかった。人前で、涙を流すことはなかった。強い女性だった。

 マネは自分の部屋で、毎晩、夜遅くまで明かりを灯していた。エフが黙ってドアを開けてみると、マネは机に向かっていたと言う。多分、きっと涙で暮れていたのに違いない。

 マネは最後の望みとして、二カ月間の猶予が与えられた。たった二カ月間で、青春を堪能したかったようだ。美味しい食事を、腹一杯食べた。友人たちと一緒に旅行をし、温泉にもつかった。

先祖がたどった土地を巡ったり、思い出のある土地を散策したりもした。観光旅行を存分に楽しんだ。