ジェネシス(創世記)

物理学者は、ユダ人の財宝が隠された「地図」を探したが、発見できなかった。膨大なナノチップから探し出すには、大変な労力を要する。あきらめたようだ。

 地球の生存者は、地下施設で生活している。亡き長女夫婦の子孫が生きていることが、判明した。物理学者は喜んだ。

生存者たちに通信機を作らせて、連絡を取り合った。これで希望がもてた。火星と地球との間に、交流が生まれた。

 物理学者の頭脳は、さらに優れた知性を発揮した。物理学者は、「彼」との共同作業で「万能ビーム」を開発した。地球との間で通信を交わした。

電波では時差が生ずるが、ビームだと心配はない。また火星から発したビームで、直接地球の施設に電気を供給した。

「彼」は、遠隔操作による手術も実施した。ビームだけで麻酔、メス、患部の切除、血栓の溶解、血管の拡張、血管や神経の縫合などの手術を行った。

「神の子」としての力を、存分に発揮してみせた。「狭心症」の女性も、ビームで治癒できた。

 それから二年後、物理学者は手術も化学療法も拒否し、臓器の複製移植も拒否した。天寿を全うすることを決意した。自然の摂理、生命倫理に服従することにしたのだ。

三00年前、日本で制定された「尊厳死法」の手続きに従い、「彼」はためらうことなく、物理学者の生命維持装置のスイッチを切った。物理学者は、悔いを残すことなく息を引き取るのであった。