ジェネシス(創世記)

司令官は、火星に無人探査機を降下させ、ハトを放した。帰ってきたハトは、オリーブの葉をくわえていた。

オリーブの樹が、ユダ人居住区の近くに生育しているようだ。司令官は、火星に居住できると判断を下した。

 司令官たちは、有人偵察艇に乗って火星に降り立った。ユダ人の居住地に着陸した。部下たちは、探査車ローパーを走らせて調査を始めた。

そこはもう、赤褐色の不毛の大地ではない。緑の平原に覆われた、命の息吹を肌で感じられる大地だ。

 モビルスーツを着用した司令官たちは、探査車から降りて火星の大地に足を踏み入れた。司令官はヘルメットを外し、大きく呼吸をしてみる。息が苦しい。

薄いが、確かに空気はある。身体が慣れるのに、しばらくは時間がかかることであろう。久しぶりの空気であって、新鮮さがある。空気がこんなにおいしいものとは、思わなかったようだ。

 調査隊は、地下にあるユダ人の居住地施設に潜入した。入り口が、爆発で封鎖されている。レーザービームで開いた。

そこには、冷凍睡眠装置の中で眠っている、ユダ人一二名が発見された。まだ生きている。体内に埋められた探知チップの小型電池が、一五0年以上も前から切れていたようだ。

 当時二つの勢力によって、ユダ人が分裂した。争いが起こり、爆発によって出入り口がふさがれた。通信施設も破壊されていた。

 幸いにも、ウイルスのワクチンが一本だけ、医務室の金庫に保管されていた。これをもとに、「彼」はワクチン開発を進めた。

方舟の船内で、一ヶ月足らずでワクチンの複製に成功した。研究開発が、あまりにも早すぎる。