ジェネシス(創世記)

「彼」と両親、物理学者、乗員たちが冷凍睡眠装置の中で眠りについた。介助犬ピイチャンも眠りについた。全員を眠らせた後、司祭者一人だけが残った。

 司祭者は、「彼」に聖油を注いだあと、自分の果たすべき役目を終えたようだ。司祭者は高齢であり、しかも被爆していた。

検査や治療のため、乗員たちの放射線撮影を操作していて、いつのまにか被爆していたようだ。

 心配させまいと、だれにも相談していなかった。自分で診察し、錠剤を服用していた。妻にも内緒にしていた。知っていたのは、ピイチャンだけだった。

 司祭者は、操縦室の機長席に座り、ゆったりとワインを嗜んでいる。一眠りする前に、青く美しい火星を、じっと眺めている。

司祭者は、自分で筋弛緩剤を打ち、そのまま安らかな眠りについた。それは永遠に、目を覚ますことがなかった。