ジェネシス(創世記)

物理学者は、「曲線ビーム」の開発中に放射線を浴び、頭部に悪性のガンが発症した。発見が遅すぎた。脳の患部を切除しても、後遺症は残る。

下半身不随となる。完治する見込みはない。助ける方法がない。外科医の妻は、すでに他界している。

 司祭者は、高齢でしかも内科医だ。専門は細菌と遺伝子治療だ。手術は得意ではない。朝鮮民国の医師たちでも、開頭手術をした者はだれもいなかった。

自信をもって手術できる医師は、船内に一人もいない。「彼」はまだ若すぎるし、開頭手術の経験は一度もない。

 高度な施設もなければ、治療道具や薬品もそろっていない。物理学者は、モルヒネなどで激痛を阻止した。しかし「彼」は、物理学者を救おうと懸命に研究に励んだ。

「彼」は、司祭者が持ち込んだ「極限環境細菌」の研究に携わった。「放射性抗体菌」を多少改良した。

さらに、「高熱性抗体菌、紫外線抗体菌、高圧性抗体菌、深海性抗体菌、嫌気性細菌、硫化水素抗体菌、低重力抗体菌など」を研究した。火星で生存するためには、人類の体質や遺伝子を書き換えなければならない。

 その間に物理学者は、助手ロボットのアルバートに、口述による「聖書」を書き続けた。司祭者やユダ人から聞き取り、書き記した。それは一年後に「聖書」が完成した。

 物理学者はガンの進行を阻止するために、冷凍睡眠装置の中で眠りについた。「彼」が、治療方法を確立し、治療機械を製作するまでの間、眠ってもらった。

 私は「彼」に、アカシック・レコードを通し治療方法を教えた。その方法に従えば、物理学者は助かる。但し、常識を逸したやり方だ。生存の保障は、何一つない。