ジェネシス(創世記)

司令官は、地球にも送信を試みた。案の定、応答はなかった。地球を周回している監視衛星にアクセスし、モニターをのぞいた。厚い黒雲に覆われて、地表を確認できない。

 モニターは、日本の近畿州、北京都方面を捉えた。赤く火照った生体熱反応があった。炭酸ガスの輩出も確認された。呼吸をしている。地表を歩いている人も、感知器は捉えた。人類が生存している。

 世界中の都市は破壊尽くされ、一0メートル以上の土砂などで埋没している。通信施設など、現存しているはずはない。連絡はもうとれない。

文明を失い、原始時代のような生活を送っているはずだ。けれども、人類には知性と教養がある。復興に向けて、いずれ立ち上がるはずだ。方舟の乗員たちは、そう信じた。信じるしかなかった。

 イラム教徒のパイロットたちが、偵察艇で宇宙船や宇宙ステーションに乗り込んだ。被爆した遺体を、宇宙葬にするためだ。

「高圧熱処理機」によって、遺体を灰にした。その遺灰を宇宙に撒いて、死者を弔うのであった。