ジェネシス(創世記)

元馬小屋を手術室に作り換えた。物理学者の次女は、無事に出産を終えた。待望の男の子だ。次女もその息子も元気だ。

「彼」は保育器の中ですくすくと育っている。この時一0光年もかかって、超新星の光が地球に到達し輝いた。「彼」を祝福しているようだ。

 物理学者は、素直に次女の出産を喜んだ。次女が非行に走ったのは、父が自分の存在を認めてくれないからだ。父はいつも、長男と長女に期待を抱いていた。

次女も精一杯、父親の信頼に応えようと勉強に励んだつもりだった。でもなぜか、全て裏目にでた。

 いつしか次女は、父親の度重なる批難めいた発言にいらだちを覚え、反発し自暴自棄に陥った。

長男・長女に比較されることが、嫌だった。たった一言、「褒め言葉」が欲しかった。優しい愛情を、求めていただけなのだ。

 物理学者は、照れ屋で恥ずかしがり屋だ。素直に自分の気持ちを伝えられない。外科医である妻からの助言で、物理学者は、一通の「手紙」を寝ている次女の枕元に置いた。

今までの、謝罪の言葉が書き綴られていた。次女は、頬を濡らしながら父を受け入れた。

 それ以来物理学者は、次女のよい点を褒め尽くした。悪い箇所も、ほどよく褒めては自信をもたせた。ムチとアメ。二人は親子のきずなを取り戻すのであった。

 出産から八日目、司祭者は「彼」に「割礼」を施した。私は祝福する。方舟に乗員している一00名の人類たちよ、火星への居住を許すことにしよう。