ジェネシス(創世記)

中立的な立場のある国といえば、そう「日本人」くらいしかいない。他の民族・宗派は信用できない。

そのため私は、古の時代からユダ人に、日本と接触させるように努めた。ユダ人の子孫から、「救世主」を誕生させるためだ。イゼスの孫息子が、中国大陸を小船で渡って日本の九州にたどりついた。

さらに東へと進み、大和地方を訪れた。大和民族に追われ、東北地方に逃れた。そこに腰をおろし、地道ながらも布教活動を行った。

そこで日本の女性と結婚をして、子孫を作った。その頃は、もう老人になっていた。とてつもない、長い旅であった。

 その遠い子孫の一人、日本の物理学者に「方舟」を建造させた。方舟の設計者は、他にもいた。誰でもよかった。

中立的な立場の日本人はいくらでもいたが、「救世主」を方舟に乗船させるため、私は、「付添人」として物理学者を選んだ。

 次女夫婦には、「夢のお告げ」など必要はなかった。生きるために、父との和解を求めたいがゆえに、物理学者に頼ることが必然的だったからだ。宿命は決まっていた。

 物理学者は、純粋なユダ人ではない。イゼスの「ミトコンドリアDNA」を受け継いだ、遠い子孫だ。

イゼスのように特殊能力を備え持った人間を作り出すには、次女夫婦の遺伝子を変える必要があった。金魚からフナが生まれるように、遺伝子に「傷」をつけた。

未熟児として次女を誕生させ、遺伝子に傷をつけた。亭主の遺伝子にも、傷をつけた。二人が交われば、イゼスと同じような、いやそれ以上の能力をもった人間が誕生する。

私が求める、「救世主」だ。但し、全ての未熟児が傷をもっているわけではない。人類を「神の国、火星」へと導いてくれる、救世主だ。

この救世主を誕生させるために、私はユダ人と契約をしたのだ。火星に「生命」を誕生させるためであれば、救世主は何人でも誕生させる。それはウイルス、恐竜、犬、動物でも植物でも構わない。

火星に生命が誕生しなければ、救世主も人類も必要ない。「死」あるのみ。絶滅させるだけだ。