ジェネシス(創世記)

小さな図書室で、ユダ人に関する歴史書をあさりながら、今執筆活動をしている。この図書室には、世界中の文献が「ナノチップ」に保存されている。

 あー、なんだか、身体がだるい。頭が重苦しい。吐き気に胸やけ、めまいがする、貧血であろうか。物忘れがひどいな、知能の低下が感じられる。

身体が衰弱している。時間はたくさんあると思っていたが、意外にも被爆の進行が早いようだ。

 冷凍睡眠装置の中で眠っている乗員たちは、マイナス一度の極低温状態だから被爆してもガン細胞は活発化しない。

しかし私は、起きて活動している。当然、ガン細胞は増殖し続けている。多分、全身に転移しているだろな。

 外科医の妻を起こしたくない。精密検査を施したいが、「脳内スキャン」は一人では作動できない。アルバートには、操作するだけの機能がついていない。

薬を調合してもらいたい。部屋にある痛み止めを飲むぐらいしか、私にはできない。モルヒネ(鎮痛剤)を注射したいが、管理が厳しくてどこに保管されているのか、分からない。

 太巻き寿司型の方舟は回転して、ある程度の重力を発生している。それでも、方向感覚がおかしくなりそうだ。

カルシウムが不足し、筋力はさらに低下している。食欲も落ちてきた、体重が減っている。顔の頬がこけ、身体がやせていく。

介助犬のピイチャンが、私のことを心配している。ピイチャンも、体調の不良を訴えている。

「花の色は 移りにけりな いたずらに わが身世にふる ながめせしまに」

花も色あせるように、眺めれば、むなしくも私の容姿もうつり変わる。小野小町。